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ハヌカの祭りの歴史的背景(2) マカバイ記① (1章)

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3. ハヌカの祭りの歴史的背景(2) マカバイ書① (1章)

【聖書箇所】マカバイ記上 1章

ベレーシート

  • マカバイ記上1章からの瞑想です。「ハヌカ」(「ハヌッカー」חֲנֻכָּה)の祭りの歴史的背景を学ぶなら、メノーラー(神殿の燭台)で使われる油の奇蹟は伝説の域であることが分かってきます。なぜなら、マカバイ記にはそのような記述が一切ないからです。伝説の部分を抜いたとしても、「ハヌッカー」の光の祭典としての意味は失われません。なぜなら、そこには根源的な事柄があることに気づかされるからです。その気づきのためには上からの光が不可欠だということです。ハヌカの祭りが八日間と設定されているのは、ソロモンが神殿を奉献した七日間の祝いと仮庵の祭りの八日間に準じる形に由来しています。しかし、日が進むごとに蝋燭の火が一本、二本と増えていくやり方は、光の量が増えていくことで、神の世界におけるより根源的な事柄に目が開かれて行くことを暗示しているようにも思われます。
  • マカバイ記を呼んで感じることは、ギリシアの時代に起こったヘレニズムとヘブライニズムとの衝突です。これはやみと光との衝突であり、御国が完全に到来する日まで続きます。使徒パウロが「光とやみとに、どんな交わりがあるのでしょう」(Ⅱコリント6:14)と言っているように、それは光とやみとには一切の交わりが存在し得ないということです。このことに目が開かれるにも、多くの上からの光を必要としているのです。ギリシアから始まったヘレニズムは今日、世界中をくまなく席巻し、大きな影響を与えています。ヘレニズムに象徴されるのはオリンピックで、人間と人間が競い合うことで称賛を勝ち取る世界です。一見、これはだれが見てもおかしなことではありませんが、その根底には人間中心主義の思想と価値観が敷衍しています。
  • ギリシアを中心とするヘレニズムは人間中心の世界であり、ユダヤを中心とするヘブライニズムは神中心の世界です。それゆえそれらを人間的に融合することなど(混ぜ合わせることは)決してできません。マカバイ記はそのテーマを扱っている書だと言えます。その視点から「ハヌカの祭り」を考えるなら、単なるユダヤの祭りの域を超えた、神の民としての今日的課題を持った祭りとなります。つまり、「ハヌカの祭り」を神のマスタープランの視点からもう一度見直すことで、そこに隠されている秘密を再考する価値があると信じます。

1.ギリシアが生んだアンティオコス4世・エピファネスの登場

  • マカバイ記上1章10節に「そしてついには彼らの中から悪の元凶、アンティオコス・エピファネスが現れた。」とあります。「彼らの中から」とは、ペルシア帝国を打ち倒して世界を征服したマケドニア(つまりギリシア、聖書では「ヤワン」と称されます)のアレキサンダー大王とその武将たちとその子孫からという意味です。その中から「悪の元凶、アンティオコス・エピファネス」が現れたのです。「エピファネス」とは「現人神、あるいは、現神王」という意味ですが、アンティオコス4世は自分を呼ぶ呼称として「エピファネス」と呼ばせていたようです。しかしユダヤ人は「エピマネス」(気違い)と陰口をたたいていたと言われます。
  • 「悪の元凶」は新共同訳の訳語ですが、フランシスコ会訳は「一本の罪深い芽」、バルバロ訳は「悪の根」と訳しています。それは彼がユダヤ人たちやエルサレムを武力でヘレニズム化させようとしたことを意味しています。しかも、それに従わないものを死刑にしたのです。そのために、「こうして彼らは異邦人の流儀に従ってエルサレムに錬成場(=体育館、競技場)を建て、割礼の跡を消し、聖なる契約を離れ、異邦人と軛を共にし、悪に身を引き渡した。」(1:14~15)とあります。エルサレムがヘレニズム化された都となるためには、錬成場(=体育館、競技場)を築くことは必要条件であったようです。当時の競技は裸でなされたために、すでに割礼を受けていた者は特別な手術で無割礼の状態に戻したようです。また、割礼を受けないことはユダヤ教の放棄を明らかにすることでした。
  • アンティオコス4世・エビファネスは、すべての人々が一つの民族となるために、おのおの自分の慣習を捨てるよう勅令を発しました。彼がしたことをまとめてみると、以下のようになります。

(1) 安息日を汚したこと。
(2) 主の例祭と聖なる日を汚したこと。
(3) ギリシアの偶像(ゼウス)を祭壇に置いて拝ませたこと。
(4) 祭壇には豚の血をささげたこと。
(4) 聖書で禁じている不浄な食べ物を食べさせたこと。
(5) 割礼を禁じたこと。
(6) トーラーの学びを禁じた。

  • 上記の内容に違反した者はすべて死刑に処しました。このようにして神を拝むユダヤ人を徹底的に迫害したのです。またユダヤ人の中にはギリシアと手を結ぶ者たちがいたことも事実です。
  • このような迫害を私たちはどのように思うでしょうか。キリスト教の歴史において、このアンティオコス4世・エピファネスと同様なことをしてきた者たちがいます。それはローマ・キリスト教会です。ユダヤ人を排斥し、彼らの社会的地位を剥奪し、彼らの伝統とそのルーツを断ち切り、世界に離散させた反ユダヤ主義です。これが置換神学を生みました。

2. ユダヤ人に迫害をもたらした要因

  • 聖書には、神に選ばれた民が神のトーラーから離れる時に、必ず、神は他の国を用いて矯正をするという神の矯正が記されています。マカバイ記上1章の最後の節にはこう記されています。

64節
こうしてイスラエルは神の大いなる激しい怒りの下に置かれたのである。

  • ユダヤ人の迫害の裏には大祭司たちの堕落があったことは否めません。そのいくつかを紹介したいと思います。以下の情報は、「マカバイ記下」からのものです。

(1) ヤソン

●大祭司オニア3世の弟で後にエルサレムの大祭司になったヤソンという人物。彼はひどい悪人で、アンティオコス4世がシリアの王位を継承したとき多額の賄賂を使って大祭司の職を手に入れ、兄オニア3世を追放して大祭司となりました。彼はユダヤのヘレニズム化を押し進め、ユダヤ的伝統を無視し、エルサレムに青年の錬成場を作り、青年たちにギリシア帽をかぶらせ、格闘競技会まで開催しました。ところが、3年後にメネラオスという悪人がヤソン以上に多額の賄賂を使って大祭司となり、ヤソンは追放されてしまったのです。ヤソンの奸計はメネラオスの奸計によってくじかれたと言えます。

(2) メネラオス

●ヤソンに続く、エルサレムの大祭司。前任者のヤソンと同じく賄賂を使って大祭司になった、急進的なヘレニズム推進者であったヤソンは、大祭司となった3年目にシリア王アンティオコス4世への使者としてメネラオスを派遣したが、メネラオスはヤソンを裏切って王に媚びを売り、ヤソンよりも多額の賄賂を使って大祭司の職を奪い取った。そのうえ彼はユダヤの伝統を軽んじ、ヤソンよりも大胆にエルサレムのヘレニズム化を推進し、兄弟リシマコスを使って神殿から財宝を横領しました。

●元大祭司オニア3世がこうした行為を非難しても彼は気にせず、逆にオニアを殺害しました。彼の非道に一時期エルサレムは騒然となりましたが、これはアンティオコス4世の武力で鎮圧されました。このとき王はエルサレム神殿の財宝を略奪しましたが、メネラオスはそれを止めないばかりか、王の略奪行為に積極的に協力したのです。こうして、彼は好き勝手にエルサレムを支配し続け、やがてマカバイの乱の首謀者であるユダ・マカバイにその地位を追われるまで大祭司の地位に留まりました。

(3) リシマコス  

●エルサレムの大祭司メネラオスの兄弟であり、堕落したメネラオスに協力して悪行を働いた無頼漢です。大祭司の兄弟として大祭司の代理を務めることもありましたが、その地位を利用して神殿の財宝を横領しました。悪事の噂は人々の間にも広まり、大勢の者が結集して彼に抗議したこともあったようですが、彼は少しも反省しませんでした。怒った群衆が暴動を起こしそうになると、リシマコスは3千人の兵士を動員して武力で弾圧を加えたのです。

●この攻撃に対して、人々は手近にあった石ころや棒切れや灰を投げつけて対抗します。群衆の数は兵士の数をはるかに上回っていたため、リシマコスは神殿の片隅に追い込まれ、最後は人々に捕らえられて殺されることになります。

  • ユダヤ迫害の陰には大祭司の堕落、および、人々の信仰の堕落があったことをマカバイ記1章64節は伝えているのです。大祭司と言えば王制なきユダヤにおける最高指導者です。その最高指導者が堕落するとき、神がアンティオコス4世・エピファネスを通してユダヤ人の上にさばきを下したというのが、マカバイ記上の神学なのです。

2015.12.9


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