最初の王として油注がれたサウル
サムエル記の目次
8. 最初の王として油注がれたサウル
【聖書箇所】 9章1節~10章16節
はじめに
- 9章からサムエル記の主題である王制導入に当たって、だれが最初の王として選ばれるのか、その神の導きはどのようになされたのかを見たいと思います。
1. 最初の王として選ばたサウルのプロフィール
- 9章にはサウルのプロフィールが記されています。
(1) 出生
ベニヤミン族。父キシュの一人息子で、名は「サウル」(「シャーウール」שָׁאוּל)で、「求められた者」という意味。(2) 容姿
「美しい若者」の「美しい」という形容詞は「トーヴ」(טוֹב)です。
2節に2回「トーヴ」が使われていますが、新改訳と新共同訳はいずれも「美しい」と訳されるのに対し、岩波訳は最初の方を「優秀な」と訳し、後を「美しい」と訳しています。また、「若者」という名詞は「バーフール」(בָּחוּל)には「成人した、働き盛り、選ばれた」という意味合いがあります。しかも「だれよりも肩から上だけ高かった」とあります。つまり、立派な体格をもった若者だということが分かります。サウルの後継者となるダビデもその姿は「トーヴ」(טוֹב)で、「立派だった」と聖書は記しています。(3) 性格
サウルの性格は、父に対して従順。同年代の者に対しては謙遜であった。人に対しても素直な面が目立ちます。(4) 霊性
霊的にも敏感であったと言えます。導きを求めて預言者を尋ねたり、主の霊によって預言をします。神に対して心が開かれており、柔軟でした(10:9)。
- 以上のように、人間的には良いものをいろいろと兼ね備えた人物であったと言えます。
2. 神の召命に対する冷静さ
- サウルはサムエルから神の召命を聞かされた時、非常に冷静に受け止めています。サムエルが油のつぼを取ってサウルの頭にそそぎ、彼に口づけして言った召命のことばは以下のとおりです。
【新改訳改訂第3版】
10:1
【主】が、ご自身のものである民の君主として、あなたに油をそそがれたではありませんか。
- そして、その召命を裏付ける神のしるしが起こることを語ります。そしてその日のうちに、サムエルが語った神のしるしは起こりました。しかし、サウルはこのことをだれにも話しませんでした。ここに彼がきわめて冷静な人物であることが伺えます。
3. 神の導きの妙
- サウルとサムエルの出会いにおいて、そこに神の導きの妙を知ることができます。そしてそれは神の導きの一つの原則とみることができます。
(1) サウルの側の神の導き
きわめて日常的な出来事の中に神の導きがありました。それは父が大事にしている雌ろば(複数)がいなくなつたという出来事です。父から頼まれてもうひとりの若者といなくなった雌ろばを搜しにいきます。ところがそれが見つかりませんでした。そこでサウルと一緒に言った若者が、神の人の存在について語ります。その人のところにいければ行くべき道を教えてくれるかもしれないとの提言を受けて、その神の人のいる町へ出かけたのです。すると、神の人(サムエル)は、今しがたその町に来られたところでした。
(2) サムエルの側の神の導き
サムエルは神から「あすの今ごろ、ひとりの若者を遣わすから、彼に油を注いで神の民の君主とせよ」との啓示を受けていました。そして、彼と出会ったのです。彼らは共に食事をしました。
- このように出会う両者が前もってそれぞれ神の導きを受けています。似たような例としては、使徒ペテロと敬神者で百人隊長のコルネリオになされた神の導きです。使徒の働きでは実に10章と11章の2章を費やして記されています。福音がユダヤ人から異邦人へと伝えられていく重要な導きでした。
2012.5.24
a:10024 t:3 y:1