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2章4a節「これは、天と地が創造されたときの経緯である。」


創世記2章4a節

【新改訳2017】
これは、天と地が創造されたときの経緯である。
【聖書協会共同訳】
これが天と地が創造された次第である。

ד־א אֵלֶּה תֹולְדֹות הַשָּׁמַיִם וְהָאָרֶץ בְּהִבָּרְאָם

1. 前半の「これは」

●「これは」と訳された指示代名詞は、原文では「これらは」(複数)という意味の「エーッレ」(אֵלֶּה)で、その単数形は「ゼ」(זֶה)です。しかもこの「ゼ」(זֶה)の初出箇所は創世記5章1節で、そこでは「アダムの歴史」について書かれているのです。しかし2章4節では「アダム」のみならず天地創造の全体を内容としているため、複数形の「エーッレ」(אֵלֶּה)となっているのです。日本語訳のほとんどがその違いを表記せず、いずれも「これは」で訳しています。ただ関根正雄訳は「エーッレ」(אֵלֶּה)を2章4節では「以上は」と訳し、5章1節の「ゼ」(זֶה)を「以下は」と訳しています。複数か単数かの違いは見分けられませんが、適訳だと思います。

2. 前半の「経緯」

●「経緯」と訳された語彙は「トールドート」(תוֹלְדוֹת)です。これは「トーレードート」(תּוֹלֵדוֹת)の連語形で「~の家系、系図、由来、次第、成立事情、後継者、歴史、系列、路線、成立史」とも訳されます。訳すともともとのニュアンスが失われてしまう語彙の一つと言われています。語源は「生む」を意味する「ヤーラド」(יָלַד)です。

●創世記5章1節の「トールドート」(תוֹלְדוֹת)は「系図」と訳されていますが、その系図の特徴は「だれがだれを生んだ」(「産む」は女性の場合に使われます)という定式で記されています。マタイの福音書1章の系図もこの定式で記されています。イェシュアにつながるきわめて重要な系図なのです。へブル人たちはなぜ系図を重んじるのでしょうか。それは、彼らが「生めよ。増えよ。地を満たせ」という神の至上命令を果たすために特別に選ばれた民だからであり、そこからメシアが生まれ、やがては神のご計画を実現させ、多くの実を結ぶためだからと言えます。

●創世記には10の系図(תוֹלְדוֹת)が記されています(脚注)。いずれも「これは・・の系図(歴史)である」という定式で書かれていますが、単数の「ゼ」(זֶה)を使っているのは5章1節だけです。その理由は、その箇所では「系図」(תוֹלְדוֹת)にではなく、「(系図の)書」である「セーフェル」(סֵפֶר)」(単数)に掛かっているからです。「トールドート」(תוֹלְדוֹת)は常に複数であるため「エーッレ」(אֵלֶּה)が使われていますが、多くの聖書が「これは」と単数的に訳しています。

●創世記には10の系図の他にも、つまり、「トールドート」(תוֹלְדוֹת)という語彙がなくても、「~を産んだ、~が生まれた」とする系図に関するものが記されています。それは「カインの系図」(4:17~24)と「ユダの系図」(38:1~30)です。

脚注

天地創造からヤコブの子孫、すなわち全イスラエルにつながる系図(「トールドート」תוֹלְדוֹת)とイスラエルとは異なる系図があります。引用はすべて【新改訳2017】です。
(1)「これは、天と地が創造されたときの経緯である。」(2:4)
(2)「これはアダムの歴史の記録である。」(5:1)
(3)「これはノアの歴史である。」(6:9)
(4)「これはノアの息子、セム、ハム、ヤフェテの歴史である。」(10:1)
(5)「これはセムの歴史である。」(11:10)
(6)「これはテラの歴史である。」(11:27)
(7)「これは、・・アブラハムの子イシュマエルの歴史である。」(25:12)
(8)「これはアブラハムの子イサクの歴史である。」(25:19)
(9)「これはエサウ、すなわちエドムの歴史である。」(36:1, 9)
(10)「これはヤコブの歴史である。」(37:2)

●2章4節は「経緯」と訳し、他はすべて「歴史」(新共同訳は「系図」)と訳されています。「経緯」は神の創造と安息に至るまでの流れを意味していますが、「歴史」(系図)は神とのかかわりの「系列、路線」を意味します。その「歴史」は、創世記2章から全聖書を通して、「いのちの系列(路線)」と「知識の系列(路線)」に分かれます。アダムから始まった歴史は常に二つの系列に分かれて進み、黙示録においてその最終的な結果(究極的な終結)をもたらします。「いのちの系列」は永遠の救いをもたらす光であり、「知識の系列」は死という永遠のさばきをもたらす暗闇を意味します。


2020.3.23
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