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歴代誌のクライマックス

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25. 歴代誌のクライマックス

【聖書箇所】Ⅰ歴代誌 29章1節~30節

ベレーシート

  • Ⅰ歴代誌29章(28章も含めて)は、「神の宮を建てる」という歴代誌の一大テーマのクライマックスです。それは父ダビデの思いをソロモンが実現するということが公にされているからです。これは天における御父と御子とが、天と地において主の家を建てるという壮大なヴィジョンの写しとなっています。その「主の家を建てる」という壮大なヴィジョンの中に、創造があり、堕落と救いの計画があり、十字架と復活があり、メシアの再臨、千年王国があり、新しい天地創造があり、神の聖なる御名の全貌があるからです。特に、ダビデが祈った祈りは、イェシュアが弟子たちに教えた「主の祈り」を思わせます。その祈りはまさに御子イェシュアが絶えず祈っていた祈りだからです。このことについては、以下を参照のこと⇒「主の祈り」のミドゥラーシュ
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  • 29章には神の宮を建造するにあたって、二つの重要な事柄が記されています。一つは「地的現実として、自ら進んで(自発的)にささげること」。もう一つは「天的現実として、すべては主の御手から出たこと」。つまり、すべては「聖なる御名のため」であるということです。

1.  自ら進んでささげること(地的現実)

  • ダビデの生涯の願いは、詩篇27篇4節に示されています。
    「私は一つのことを主に願った。私はそれを求めている。私のいのちの日の限り、主の家に住むことを。主の麗しさを仰ぎ見、その宮で、思いにふける、そのために」(新改訳)ーこれがダビデの生涯を貫いた聖なる情熱です。この情熱の中に、主の宮の建造のヴィジョンがあります。このヴィジョンは天の神(三位一体の神)のヴィジョンであり、それは父ダビデと息子ソロモンによってこの地上に実現しますが、それは天にある神の住まいの写しでしかありません。本体は天にあります。
  • ダビデは主の宮はこの建造のために、力を尽くして準備しただけでなく、ダビデ自身の財産のすべてをささげました。

    【新改訳改訂第3版】Ⅰ歴代誌29章

    2 私は全力を尽くして、私の神の宮のために用意をした。・・・・
    3 そのうえ、私は、私の神の宮を喜ぶあまり、聖なる宮のために私が用意したすべてのものに加えて、私の宝としていた金銀を、私の神の宮のためにささげた。

    17 ・・・私は直ぐな心で、これらすべてをみずから進んでささげました。

  • ここには、ダビデが「全力を尽くして」(2節)、「喜びのあまり(喜びにあふれて)」(3節)、「最高のもの(宝)を」(4節)、「直ぐな心で」(17節)、「みずから進んで」(17節)ーだれによりもまさって、率先してささげたことが記されています。そしてダビデはイスラエルの全集団にこう呼びかけています。「きょう、だれか、みずから進んでその手にあふれるほど、主にささげる者はないだろうか。」と。
  • このダビデの呼びかけは、率先して、主の宮のために自らすべてをかけて成そうとしている姿があります。ここにはやがて天の父から遣わされる御子イェシュアの姿があります。彼は「自分を卑しくし、死にまで従い、実に十字架の死にまでも従われたのです。」(ピリピ2:8)。また、ヘブル書12章でもこう記されています。「イエスは、ご自分の前に置かれた喜びのゆえに、はずかしめをものともせずに十字架を忍び」(12:2)と。
  • また、使徒パウロは神の福音の望みが異邦人にも分かち与えられるという奥義を悟った使徒でしたが、そのパウロが「キリストのからだのために、私の身をもって、キリストの苦しみの欠けたところを満たしているのです。キリストのからだとは、教会のことです。私は、あなたがたのために神からゆだねられた務めに従って、教会に仕える者となりました。神のことばを余すところなく伝えるためです。」(コロサイ1:24~25)と述べています。
  • 神のために、神の家を立てるために、自らのすべてをささげることを喜びとすることのなかに、神と心をひとつにする喜びが共有されているのです。自発的奉献(献身)と喜びは、一つなのです。

2. すべては主の御手から出ていることの驚きと賛美

  • Ⅰ歴代誌29章10~19節のダビデの祈りは、イェシュアが弟子たちに教えた「主の祈り」をひも解く(註解する)きわめて重要な箇所ではないかと思います。
  • ダビデはここで神を「私たちの父イスラエルの神。主よ。」と呼びかけています。旧約で神を「父」と呼ぶことはきわめて珍しいことです。神を「父」とすることは、天にあるもの、地にあるもの、すべてのものが父のものであり、地に与えられているすべてのものは、その父の御手から出たものであるという信仰がそこにあります。神の統治概念がこの祈りの中に確立されているのです。

    (1) 「主よ。・・~のすべては、あなたのものです」(11節、16節)
    「すべては、あなたのもの」のヘブル語は「レハー・ハッコール」(לְךָ הַכֹּל)です。11節に2回(לְךָ)、そして16節に1回(לְךָ הַכֹּל)あります。

    (2) 「・・は、御前から出ます。」(12節)
    「御前から出ます」のヘブル語は「ミッルファーネーハー」(מִלְּפָנֶיךָ)。「ミッレ」は「ミン」(מִן)と「ル」(לְ)の二つの前置詞で、「御前」と訳されたのは「あなたの前」を意味する「パーネ」(פָּנֶה)と語尾の人称代名詞「ハー」(ךָ)。

    (3) 「・・は、あなたの御手から出た」ものです。(14, 16節)
    「あなたの御手から出た」のヘブル語は「ミッヤードゥハー」(מִיָּדְךָ)。「出た」は補足的な訳。

    (4) 「すべてはあなたから出た」(14節)
    「すべてはあなたから出た」のヘブル語は「ミンメハー・ハッコル」(מִמְּךָ הַכֹּל)。ここでも「出た」という動詞はありません。補足して訳されています。


  • 29章のダビデの祈りの中に「返還意識」、あるいは、「天と地のいのちの交換」とも言うべき主の統治理念が繰り返し告白されています。そこに天と地がひとつに結びついています。

    【新改訳改訂第3版】
    14 まことに、私は何者なのでしょう。私の民は何者なのでしょう。このようにみずから進んでささげる力を保っていたとしても。すべてはあなたから出たのであり、私たちは、御手から出たものをあなたにささげたにすぎません。
    15 私たちは、すべての父祖たちのように、あなたの前では異国人であり、居留している者です。地上での私たちの日々は影のようなもので、望みもありません。
    16 私たちの神、【主】よ。あなたの聖なる御名のために家をお建てしようと私たちが用意をしたこれらすべてのおびただしいものは、あなたの御手から出たものであり、すべてはあなたのものです。

  • この祈りの中に、礼拝者としてのダビデの模範、ないしは王の理念が隠されていると言えるのです。

3. ソロモンは二度、即位式をされている

  • ソロモンが王位を委譲される際、二度、即位式がなされています。
    ●一度目は23章1節で、「ダビデは老年を迎え、長寿を全うして、その子ソロモンをイスラエルの王とした。」と記されています。
    ●二度目は29章22節で、「・・あらためてダビデの子ソロモンを王とし・・た。」とあります。一つ考えられることは、歴代誌は記していませんが、ソロモンが王となるにあたってさまざまな不穏な空気が王宮を支配していたはずです。ダビデの長子のアドニアの即位宣言などもその一つ。ソロモンがダビデの後継者として受け留められて、新しい体制に移行するために必要なセレモニーとして理解すればよいのではないかと思います。


「進んでささげる」と「みずから進んでささげる」の違い

●「進んでささげる」ヘブル語動詞「ナーダヴ」()です、この語彙は21回使われています。その中で強意形ピットパエル態で使われているのは13回で「みずから進んでささげる」という自発的献身を意味します。基本形だけでも「進んでささげる」という意味を持っているわけですから、ピットパエル態で使われる場合は「自ら」という意味があえて強調されているのです。

●Ⅰ歴代誌29章にはこの「ナーダヴ」(נָדַב)の強意形ヒットパエル態(הִתְנַדֵּב)が7回も使われています。このことがⅠ歴代誌29章の特徴です。ダビデのみならず、「長」と呼ばれるリーダーたち、そして民たちが「みずから進んでささげた」のです。しかも、ささげた者たちがみなそのことで喜んだと記されています。以下の(1)~(7) は、すべてヒットパエル態であり、自覚的・自発的・主体的献身によってなされたのです。
(1)5節、(2)6節、(3)9節、(4)9節、(5)14節、(6)17節、(7)17節。このような者たちのことを、聖書では「地の塩」というのです。つまり、神との永遠の契約の「塩」という意味です。そこには神との「親交」と神への「専心」があります。

●このような主体的献身は、
①戦いにおいて(士師記5:2,9、Ⅱ歴代誌17:16)
②主の宮の再建のために(エズラ2:68、3:5)
③エルサレムに常住することにおいて(ネヘミヤ11:2)
に見ることができます。


2014.2.7


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